恋する白虎
窮奇は、杏樹を見て眼を細めた。

こいつは、俺が怖くないのか?

大抵のヤツは、俺を見たとたんに眉を寄せる。

邪悪な魂の持ち主なのが、見てとれるんだとよ。

なのにお前は、俺を真っ直ぐに見るんだな。

俺もお前を見てると、なんか、ちょっと変なんだ。

俺は、邪悪なのに、嫌われ者の窮奇なのに、いざお前を目の前にすると、そんな俺でいたくなくなるんだ。

「窮奇?」

窮奇はハッとして眼を見開いた。

今、俺を呼んだのか。

窮奇は、痺れるような、体が浮くような、妙な感覚に動揺した。

「窮奇?大丈夫?」

「大丈夫じゃ、ねー」

杏樹は焦った。

思わず窮奇に駆け寄り、その顔を見上げる。

「どーしたの、気分でも悪いの?」

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