恋する白虎
涼やかな瞳には憎悪という名の激しい気迫がこもり、窮奇の息の根を止めようと殺気だっている。

「そんな永舜は、大嫌いよっ!!私の友達を殺さないで!」

永舜は眼を見開いた。

ばかな!

お前は騙されているんだ、何故わからない?!

杏樹は、殺す、という言葉を発した永舜が悲しかった。

ダメだよ、殺すなんてダメに決まってる。

だって、殺さないとならないようなこと、されてないじゃない。

しちゃいけない事なんだよ、なんで分からないの?

永舜は尚も窮奇を咬み、苦痛を与え続けた。

窮奇は、うなり声をあげながら必死で体をねじり、永舜の牙から逃れて後方へと飛び退いた。

杏樹は道に置いていた自分の傘を拾い上げた。

それを利き手でしっかりと掴むと、窮奇と永舜の間に割って入り、先を永舜へと向けてピタリと構えた。

「永舜、これ以上続けるのなら」

死ぬほど悲しく、とめどなく涙が溢れたが、言葉を続けた。

「あなたとの事は無かった事にするわ」

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