恋する白虎
杏樹は、ゆっくりと眼を開けた。

頭が重い。それに、寒い。

傍の椅子に窮奇が腰掛けていて、こっちを見ていた。

「目が覚めたか」

「窮奇……」

窮奇は、杏樹の顔を覗き込んだ。

「なんだ、どうした?」

「窮奇は、人を食べるの?私を、食べるの?食べるために連れてきたの?」

窮奇は、胸を突かれて息を飲んだ。

杏樹の眼から涙が一筋流れた。

「ちがう!俺は、お前を食べたりしない」

「……私、帰りたい」

窮奇は、杏樹を見つめた。

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