恋する白虎
窮奇はそう言うと、永舜に杏樹を手渡した。

永舜が驚くくらい、それはそれは大事そうに、手渡した。

窮奇、お前は……。

「じゃーな、永舜ちゃん。また、逢おうぜ」

事もなげに去っていこうとする窮奇に、永舜は声をかけた。

「窮奇!!」

「あー?」

「礼を言う」

窮奇は、振り返らずに返事を返した。

「せいぜい、大事にしてやるんだな」

分かってるぜ永舜。

お前なら杏樹を幸せにできる。

頼んだぜ。

窮奇は、拳をぶつけて有翼の虎に変わり、空に翔け上がった。

あ?

なんだ、これ……。
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