恋する白虎
永舜は、固く眼を閉じて横たわる杏樹を見つめながら、ふたりのこれまでを思い返した。

杏樹、俺は、お前に好きと告げられて、本当に嬉しかったんだ。

最後の試練が、白虎の見える人間の女を、西天へ連れ帰り妻にする事だったから、余計に。

白虎が見える人間の女はとても少ないから、愛し合える女を妻にできると思うと、嬉しかった。

杏樹。

俺が白虎で、苦しめた上に、こんなことになって、本当にすまない。

お前が無事に命を取り止めるなら、俺はもう何も望まない。

「だから杏樹、死ぬな」

永舜は、杏樹の手を握りながらその甲に頬を寄せた。
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