恋する白虎
眉を寄せる永舜の目の前で、杏樹は咳き込み、可愛らしい唇から血が溢れた。

「杏樹!!」

杏樹は永舜の呼び掛けに答えず、彼女の首は力なく傾いた。

まずい、まずいぞ!

白虎の丸薬が十分に効かないのなら、あとは……。

永舜は唇を引き結んでしばらく思案していたが、クッと空に眼を向け、意識のない杏樹に声をかけた。

「杏樹、今から行くぞ、西天へ」

永舜は、拳を片方の手で包み込み、白銀の白虎に変わると、眼を閉じて西天への門を探した。

永舜が西天を出てから、あと半年弱で百年である。

門はとうに開いているはずだ。

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