恋する白虎
おまけに、薬としての効能を得る為には、咲いている花を煎じて飲まなければならず、その花の咲く時間がほんの僅かなために、幻の薬とされている。

永舜は唇を噛み締めた。

そんな永舜をチラリと見て、永蒼は言った。

「……まあ、まずはこの女を屋敷に運べ」

「永蒼、永舜とその人間の女に力を貸してやるのだぞ」

大聖白虎永神(だいせいびゃっこえいじん)は、ふたりを代わる代わる見つめると、最後に永舜をみて言った。

「永舜。百年白虎帳の試練はまだ続いておる。励め」

永舜は、再び拳に掌をあてがい、大聖白虎に敬意を示すと杏樹を抱えあげ、屋敷へと急いだ。

大聖白虎は、ふたりの後ろ姿を眺めた。

さあ、この先は。

大聖白虎はそれを見守り、決断を下すつもりでいた。
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