恋する白虎
『エイシュンさん』ではなく、瞳を輝かせて『永舜』と呼んでくれるのではないか。

杏樹は、永舜の顔を見つめながら不思議に思った。

どうしてこの人は、こんな眼で私を見るんだろう。

まるで、私の心の中にある何かを探しているみたい。

でも、私は、この人の探しているものを持っていない。

だって、何もないもの。

この人との間に、何もない。

「よーお!人間はお目覚めか?」

屋敷の入り口で声が響き、大股で歩く足音が聞こえた。

入り口をみて、杏樹は驚いて息を飲んだ。

永舜とそっくりな男が顔を出し、ニヤリと笑っている。

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