恋する白虎
杏樹は、夢中で首を横にブンブンと振った。

「やだ、変なことしないでっ!!」

「見た方が、早い」

「やだやだ、見たくないし殺さないでっ」

…らちがあかん。

永舜はスッと杏樹から離れて距離をとると、胸の前で拳を固め、それを片方の手で包むようにしたかと思うと静かに眼を閉じた。

え、え?えええーっ!?

やだ、嘘でしょーっ!?

あっという間に立っていた永舜がかき消えたかと思うと、大きな白い虎がいきなり眼の前に現れた。

………!!!

「これが俺の本当の姿なんだ」

「……!!!」

く、く、食われる……!

「杏樹?おい、杏樹、しっかりしろ」

杏樹はそのままベッドの上に仰向けに倒れ、意識を失った。
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