恋する白虎
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……ん……。

……なんだか……外が騒がしい……。

…消防車…?

それにしても…フカフカしてて気持ちいい。

杏樹は夢うつつで微笑んだ。

ずっとこうしていたいと思った。

永舜は、気を失った杏樹に近寄ると、虎の姿のままでベッドに前肢をかけ、ソロっと上がった。

鼻で杏樹を揺すってみたが、意識を取り戻す気配はまるでない。

永舜は杏樹の隣に臥せると、まじまじと彼女を眺めた。

長い睫毛が羽根のようだ。

小さな形のよい唇は薄い桃色で、ほっそりとした首にしなやかな身体。

本当に綺麗な女だな。

永舜は杏樹に頬を寄せた。

それからさっきの事を思い返すと、胸のあたりがグッと重く感じた。

杏樹は、俺を嫌いになったみたいだな。

…俺は…好きなのにな。

「杏樹」

永舜は小さく囁いてから眼を閉じた。
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