恋する白虎
永蒼は、女の腕を優しく外しながら、低く柔らかな声で言った。

「悪いな、リン」

それから彼女に向き直り、魅力的に笑った。

「しばらくは、無理だ」

言いながらリンの額に男らしい唇を押し付ける。

「永舜で我慢しとけ」

そう言い残すと、そのまま自分の屋敷の方へと去っていった。

リンは眉を寄せた。

私は、永舜さまじゃなくて、永蒼さまが好きなの!!

いくら、同じ顔でも、中身が違う。

リンからすると、永舜は真面目で優しいが、どちらかと言うと静かなタイプで地味である。

一方、永蒼は、華やかな雰囲気を持ち、誰にでも自分をさらけ出し、女の扱いになれていて、妖しい魅力がある。

性格だって、悪くはない。

どちらも女に人気があるが、リンは永蒼が好みなのだ。

リンは振り返る事のない、愛しい背中を見つめた。

絶対に、諦めないから。
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