恋する白虎
……これは……!

無意識に辺りを見渡すと、少し先にある池のほとりに立つ永舜を見つけた。

「エイシュンさ……」

声をかけようとした時、体の向きを変えた永舜の陰から、小柄な女の子が姿を現した。

二人は互いに見つめ合い、何か話しながら笑った。

「あ……!」

杏樹は、胸の中の何かが弾けて、全身に広がるような感覚を覚えた。

思わず前のめりになって胸を両手で押さえる。

私、思い出した……あの時もこんな風な雨が降っていて……晴れた中の雨がキラキラして、あまりにも綺麗で……。

永舜は、フッと視線を移し、少し先にたたずんでこちらを見ている杏樹をみつけた。

杏樹は息を飲んだ。

そうだ、あの時も、私はこうやってふたりを見ていた。

輝く雨があまりにも綺麗なのに、私は悲しくて……。

あの時の、あの人は、確かにエイシュンさんだった。
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