恋する白虎
片想いだったの?

だから、あの時、切なかったの?

杏樹の眼から涙が溢れた。

こんな場面を思い出すなんて!

急に頭が重くなり、目の前が真っ暗になった。




「永舜さま、杏樹さんは、何かを思い出されたのでは?
そのショックで倒れてしまわれたのでは?」

崩れ落ちる杏樹に気付き、永舜は思わず駆け寄りその体を支えた。

屋敷に戻りながら、リンが眉を寄せて口を開いた。

「もしかしたら、そうかもしれない」

「けど、蘭寿草を煎じて飲むと、記憶を失い、思い出せないのが殆どなのでしょう?」

「らしいな」

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