恋する白虎
「私、思い出しました、少しだけ。
私、きっとエイシュンさんを好きだったんですね。
さっきみたいな雨の中で、他の女の子と仲良く話してるエイシュンさんを見て、私、切なかったのを、思い出しました」

杏樹……。

杏樹は少し笑った。

「でも、それしか思い出せません。
好きだったのかも知れませんけど、色々あったかも知れませんけど、今の私にはもうなにもありません。
あなたのものだった私は、もういません」

永舜は、頷いた。

「かまわない」

永舜は、低くて柔らかい声を出した。

「お前に蘭寿草を飲ませた事は後悔してない。
記憶をなくす事も想定の範囲内だ。
俺との事を思い出せなくても、俺が覚えているから、構わない。
お前の記憶がなくなっても、俺の想いは消えたりしない」

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