恋する白虎
数日後。

「杏樹さん…」

澄んだ声が聞こえ、杏樹は振り返った。

「あなたは…」

確か、晴れた雨の中、永舜と話をしていた女の子だ。

髪を二つに分け、それぞれの耳の上でおだんごにまとめた、目の大きな女の子だ。

「私はリンと申します」

リンは可愛らしく微笑むと、杏樹を優しく見つめた。

「永舜さまからうかがっています。あの…永舜さまの恋人…記憶を…なくされてますけど…」

杏樹は、戸惑いながらも微笑んだ。

「恋人……」

「あっ、あの、永舜さまは、凄く素敵な方ですよっ。性格もいいですし!
背も高いし、顔だってあんなにかっこいいし!いや、私は永蒼さまのが好きなんですけど…あっ!!」

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