恋する白虎
その日の夜、杏樹は永舜の屋敷の台所へと足を運んだ。

西天に来てから、何度かの食事をしたが、どれも美味しかった。

永舜の屋敷には数人の使用人がおり、その厨房係に、杏樹はひとことお礼が言いたかったのだ。

そっと台所を覗き、人影に声をかける。

「あの…」

杏樹はペコリと頭を下げた。

「あの、いつもありがとうございます」

「いや」

えっ…?!

聞き覚えのある声に思わず顔を上げると、目の前まで歩いてきた人影に息を飲んだ。

「エイシュンさん…」

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