恋する白虎
手を拭きながら優しい眼差しでこちらを見る永舜に、杏樹は戸惑った。

あ……!

まただ。

また、ほんの一瞬を、思い出した。

私は以前、エイシュンさんとこうやって料理を作った事がある…。

「良かったら一緒に作ってみないか?」

作ってみないか。

杏樹は、永舜の言葉に胸が熱くなった。

彼は全部覚えてる。

以前、一緒に作っていたのに、私が忘れているから、気遣ってそういう言い方をしてくれているんだ。

杏樹は、泣きそうになるのを必死で堪えながら頷いた。

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