恋する白虎
杏樹は、永舜の屋敷の中でリンに話しかけた。

リンはニッコリと笑い、口を開いた。

「きっと、永舜さま率いる炎隊が、鴆の群れを一網打尽にしてしまったんですよ」

「……」

杏樹は怖かった。

羽ばたいただけで、大地どころか石をも溶かすという鴆が、恐ろしくて仕方なかった。

どうしよう…皆に、エイシュンさんに何かあったら…。

その時である。

「鴆だーっ!!」

リンが弾かれたように声のした方を向いた。

「炎隊、毒耐隊、鴆の息の根を止めろっ!」

静かだった西天に、瞬く間に怒号と悲鳴が広がった。
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