恋する白虎
永蒼は唇を噛みしめたが、やがて口を開いた。

「命は助かる。ふたりとも蘭寿草を飲ませた」

蘭寿草……。

それは以前、杏樹の命の危機を救った薬草だ。

「じゃあ……」

そこから先は言葉に出来なかった。

記憶を、なくすかも知れないの?私のように。

「ふたりはどこですか?」

杏樹は寝台から身を起こした。

『悪いが今日のところは、永舜を見舞ってやってくれ。リンはちょっとまだ無理だ』

先程、永蒼にそう言われ、杏樹は永舜の寝室を訪れた。

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