恋する白虎
仲間の白虎達が手当てを施し、身の回りの世話をしていたが、杏樹の姿を見ると皆、気を使って席を外した。

杏樹は皆に深々と頭を下げると、ゆっくりと永舜に近づいた。

ランプの灯りに照らされた、男らしく綺麗な口元は、広い範囲で爛れ、血が滲んで痛々しい。

ごめんなさい……!

私目掛けて突っ込んできた鴆を、すんでのところで捕らえたから……。

私がいたから、炎が使えなかったんだよね。

だから咬み殺した時の鴆の体液が、きっと体の中にも入っちゃったんだ。

私が言いつけを守らずに、外に出ちゃったから!

杏樹はそっと永舜の手を握った。

「ほんとに、ごめんなさい」

目覚めない永舜を、杏樹はいつまでも見つめて泣いた。
< 237 / 270 >

この作品をシェア

pagetop