恋する白虎
リンは大きな眼を僅かに細め、じっと杏樹を見つめて口を開いた。

「あなたは?」

あ……!

杏樹は微笑みを消せないまま、ただリンを見つめた。

それから永蒼を振り返る。

永蒼は険しい表情を浮かべて、杏樹に眼で外に出るように合図した。

しばらくふたりで歩いたが、やがて永蒼は空を見上げて口を開いた。

「今回の鴆の襲来は、被害が最小限で収まって、まあいや、上出来だ。
怪我人もごくわずかだったしな」

「その中に、リンさんが……」

永蒼は、着物の袖に両手をしまいながら、寂しそうに笑った。

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