恋する白虎
「ったく、バカだぜ、リンは。
俺をかばったが為に怪我はするし記憶までなくしやがって」

永蒼は、思い出していた。



突っ込んでくる鴆をかわし、態勢を立て直す前に、反対方向から旋回して飛んでくるもう一羽を、永蒼はかわすことが出来なかった。

永蒼は炎を吐けないし、彼の爪は長くないのだ。

「くそっ!」

永蒼は、ギリッと歯ぎしりした。

「永蒼さま!!」

急にリンの声が響き渡ったと思うと、次の瞬間、鴆の姿が消えていて、代わりにリンが倒れていた。

思わず駆け寄り、リンを抱き起こそうとすると、リンは一瞬全身を縮めて自分自身を抱き締めるように腕を組み、やがて力を抜いた。

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