恋する白虎
その時フワリと風が動いて、永舜が杏樹を引き寄せて胸に抱いた。

「俺もお前が好きだ」

顔をあげると永舜の涼やかな瞳が間近に迫り、杏樹は息を飲んだ。

「ほんと?!」

永舜はゆっくりと瞬きをして微笑んだ。

「本当だ」

「嬉しい…」

瞳を輝かせた杏樹を見て、永舜は思った。

これで最後の試練も大詰めだ。

その時である。

二人が立っていた虎檜神社の鳥居のすぐ脇を、野ネズミが走った。

永舜はそれを見逃さなかった。
< 6 / 270 >

この作品をシェア

pagetop