恋する白虎
永舜は、虎檜(こかい)神社の境内で、腕を組んであぐらをかいた。

「ようー、永舜ちゃーん」

不愉快なほど空気を震わす低い声が響き、永舜は静かに眼を開けた。

窮奇(きゅうき)だ。

窮奇とは、四凶(しきょう)であり、悪神である。

いわば四獣である白虎と、四凶である窮奇は、相反する存在であった。

「何の用だ、窮奇」

窮奇は人の形に変化すると、フラフラと歩き、桜の木に身を預けてニヤリと笑った。

「いーや、別にぃ」

永舜は涼やかな瞳に強い光を浮かべ、窮奇を睨み据えた。

「おっと、やめてくれ」
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