恋する白虎
杏樹は独りでキッチンに立った。

永舜は全然帰ってこないから、買い物に出掛けて、今晩のメニューはローストビーフに決めた。

ローストビーフは案外簡単だし、永舜はお肉好きだから喜びそう。

鼻唄を歌いながら作り始めたが、作り終えてしばらくすると、鼻唄は溜め息に変わった。

…遅いなあ。

…どこいっちゃったんだろう。

早く帰ってこないかな。

顔が見たいなあ。

杏樹は、ハッとした。

…顔が、見たい?

早く帰ってきて欲しい?

杏樹は思わず片手で口をふさいだ。
< 75 / 270 >

この作品をシェア

pagetop