恋する白虎
永舜だ。

帰ったんだ。

『出る時も入る時も、玄関から!』

永舜はその約束を忠実に守っている。

手を洗い、キッチンを覗くと、永舜は杏樹の姿を見つけた。

永舜は躊躇した。

慶吾とやらが杏樹に愛を打ち明けた日から、実は面白くなかった。

ろくに杏樹と目も合わさず、会話もなかった。

あれ以来、杏樹を見るたびに、胸がジリジリと焼け付くような焦げ付くような、イライラする痛みに襲われて調子が悪かったのだ。

だが、それを杏樹のせいにしたくはない。

杏樹に当たるような、幼い真似は絶対に嫌だったのだ。
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