恋する白虎
となると自然に口数が減り、外出が増えた。

永舜は分かっていた。

それ自体が子供じみていることを。

だが、どうすればいいか分からないのだ。

……。

「お、おかえり」

杏樹は振り向かずに言った。

永舜が帰ったのが嬉しいのに、自分の気持ちに戸惑って、やたらと不自然な態度になってしまう。

「今日はね、ローストビーフだよ。私はイイから永舜、食べといてね」

そう言って、杏樹は顔をそむけたまま、永舜のすぐ脇をすり抜けて行こうとした。

俺を、避けてるのか。

反射的に杏樹の腕を掴み、声を掛ける。

「待て」

杏樹は心臓が跳ね上がり、息を飲んだ。

杏樹はこの気持ちを押し殺すつもりでいた。

「杏樹」

「なに?」

永舜は、杏樹の顔が見たかった。

「杏樹、こっちを向け」

杏樹は胸が苦しくて、精一杯の言い訳をした。

「ごめん、疲れてて。もう寝るね」

「………そうか」

永舜は、そっと手を緩めた。

お互いに、切なかった。
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