恋する白虎
「怖いのか?」

永舜が涙目の美雨に訊くと、美雨は眉を寄せてコクンと頷いた。

う……。

胸の辺りが、重くて苦しい。

鉛を呑み込んだみたい。

杏樹はベッドの上の二人を見て、なんだかここに自分が居ることが間違いのように思った。

私、美雨の邪魔をしてるっぽい……。

美雨はまるで杏樹を見なかったし、永舜は時折こちらをみたが、すぐに美雨に話しかけられ、視線を外した。

杏樹は思いきって立ち上がった。

美雨に歩み寄ると、耳元に口を寄せる。

「私、怖すぎて見れないよぉ!お昼ご飯の用意、してくるね」

美雨はニコッと笑った。

「らじゃ!」

出て行くときに永舜がチラリとこちらを見たような気がしたが、杏樹は永舜を見なかった。

見たくなかった。
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