恋する白虎
ほんと、バカだ、永舜は。

好きだから困ってるんじゃん。

白虎に恋なんかしても先がないじゃん。

先がないから、好きになっても辛いから、それがバレたくないから、苦しいんじゃん!

永舜は杏樹を引き寄せて二の腕を掴み、瞳を覗き込んだ。

大きな瞳は潤み、唇はわずかに震えている。

杏樹は永舜を振り仰いだ。

涼やかで男らしい顔を少し傾け、切なげな眼差しは真っ直ぐ杏樹に向けられている。

「杏樹。俺はお前が好きになったんだ。
俺達が出逢ったのは運命だ。杏樹、俺達はもう、」

「やめてよっ」

杏樹は力を込めて永舜の腕を振り払った。

俯いたらポロポロと涙がこぼれた。
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