恋する白虎
永舜は、急に怯えて去っていった杏樹の後ろ姿を呆気に取られて見つめた。

なんだ、どうしてだ。

さっきまですごくいい雰囲気だったでないか。

永舜はハッとした。

話の途中にネズミを食べたのがいけなかったんだな。

参ったな。

この百年以内に人間の女を虜にして夫婦(めおと)にならないと、大聖白虎(だいせいびゃっこ)様に認めてもらえない。

杏樹を西天に連れ帰らないと、いつ次に俺の姿が見える女が現れるかわからない。

それに。

やはり夫婦になるなら好きな女がいい。

永舜は眼を閉じて意識を集中させた。

杏樹の居場所を突き止めるために。
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