恋する白虎
***

「ほーぉ……」

窮奇(きゅうき)は、高い屋根の上で寝そべって、赤く染まり始めた空を眺めた。

「あの永舜ちゃんがねぇ」

窮奇には遠眼がある。

遠眼とは、離れた場所を見る眼である。

窮奇は白虎の存在が気に食わない。

窮奇も、姿は虎で、翼があった。

「なんで、俺が四凶で、永舜が四神なんだよ」

白虎は、四獣とも四神とも呼ばれ、西天の守護を司っているが、四凶である窮奇は、地底の岩山に封印されていた。

ただ、百年に一度だけ自由を許されていて、まさに今がその時である。

先日、偶然窮奇は神社で永舜を見つけ、それ以来度々遠眼を使い、永舜を見ていた。
< 90 / 270 >

この作品をシェア

pagetop