恋する白虎
急に笑い出した杏樹を見て、窮奇は少し眉を上げた。

……可愛い女だな。

「おかしいか?」

杏樹は大きな瞳で窮奇を見て、少し顔を傾けた。

「さっきまで悲しかったのに、おかしくなっちゃって。だって、永舜ちゃんだって」

「永舜ちゃんが、おかしいか?」

「永舜君でもなく、永舜ちゃんってのが、なんかおかしくて」

窮奇は、男らしい口元をグイッと上げて白い歯を見せた。

「あいつには、ちゃんがお似合いだ」

杏樹は笑い終えて、小さく呟いた。

「あの、虎め」

人の気も知らないで。
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