恋する白虎
窮奇は、寂しそうに俯いた杏樹を見つめた。

長い睫毛が影を落とし、小さな唇をわずかに尖らせている。

窮奇は杏樹を見つめたままで言った。

「俺も虎だぜ」

「白虎なの?」

窮奇は、夕陽を見つめながら言った。

「白虎じゃない。
……俺は…窮奇ってんだ」

そんな窮奇の眼差しが少し悲しそうに見えて、杏樹は眼を見張った。

「窮奇?」

「ああ、嫌われ者だ」

嫌われ者…。

自分でそう言ったものの、窮奇は話題を変えたかった。

「見てみな」
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