恋する白虎
名前、なんてったっけな?また忘れた。

そう思った途端、胸の中が浮き上がるような、不思議な感覚に襲われた。

窮奇は、人間が好物であった。

強欲で悪意に満ちた人間が大好物なのだ。

だが、さっきの女はどうだ。

邪気もなく、純粋すぎて真っ直ぐで、不味いだけの部類に入る人間だ。

純粋すぎて悪意のある者を見抜けない、不味い人間。

普段の窮奇なら、鼻もひっかけない類いだ。

なのに、どーしたんだ、俺は。

フワリと揺れる長い髪や、大きくて綺麗な瞳にゾワゾワと妙な気持ちになる。

しなやかで、柔らかい肢体に触れたい。

窮奇は、また逢いたいと思った。
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