初恋
章子さんはまだ黙ったままだ。
「すぐに元通りになるよ。りゅうに聞いたけど、だいぶおさまってきたんやろ。
大丈夫や。」
インターネットに散々書かれはしたものの、しばらくすると興味を持つ人も少なくなり、今では新しい話題に注目が集まっているようだ。
手紙もだいぶ減ったし、家まで来るようなやつはさすがにいなかったとりゅうさんは言っていた。
「そやけどな、あの子はわたしが殺したみたいなもんなんよ。」
それは元には戻らへん、と、章子さんが静かに言う。
違うやろ。
勝手に生徒が死んだだけやろ。
自分の高校生のときのことを思い出す。
きっとあのときみたいに、章子さんはその生徒の話を親身になって聞いていたに違いなかった。
自分を励ましてくれたみたいに、一生懸命語りかけたが、
それが通じない相手もいたということだ。
ただそれだけのことではないか。
章子さん、世の中、時々はどうしようもないことだってある。
そやから、自分で全て背負ってたらきりがないで。
隆司もいる。おれもいる。
一人で抱え込まんでいいんやで。
「章子さん、そんなん、章子さんのせいやないやろ。
章子さん、頭ええから考えすぎなんやって。
たまにはおれみたいにぼーっとしてたらええねん。」
な、せっかく休みなんやし、りゅうのことかまったって。
最近あいつが来んから気楽でええねん、と、つとめて明るく言った。
すると、
「あの子、最近彼女でもできたんかなあ。」と、章子さんもやや明るい顔になった。
「直人くん、何か聞いてる?」と言う。
「この前、女の子が近くまで来てくれたみたいで、急いで出て行ったと思ったらにこにこして帰ってきて。
世の中そういう変わった子もいてるんかなあ。」と言うので、
「確かに、変わった子やで。ちょっときついけど、きれいな子やし、あいつにはもったいない。」と答えた。
それからしばらく、留美ちゃんと隆司のやり取りなんかを教えてやると、
章子さんはそれを楽しそうに聞いていた。
それから、
「確かに、隆司にはもったいない子やな。」と言うので、ほんとうに久しぶりに二人で声を上げて笑うことができた。
「すぐに元通りになるよ。りゅうに聞いたけど、だいぶおさまってきたんやろ。
大丈夫や。」
インターネットに散々書かれはしたものの、しばらくすると興味を持つ人も少なくなり、今では新しい話題に注目が集まっているようだ。
手紙もだいぶ減ったし、家まで来るようなやつはさすがにいなかったとりゅうさんは言っていた。
「そやけどな、あの子はわたしが殺したみたいなもんなんよ。」
それは元には戻らへん、と、章子さんが静かに言う。
違うやろ。
勝手に生徒が死んだだけやろ。
自分の高校生のときのことを思い出す。
きっとあのときみたいに、章子さんはその生徒の話を親身になって聞いていたに違いなかった。
自分を励ましてくれたみたいに、一生懸命語りかけたが、
それが通じない相手もいたということだ。
ただそれだけのことではないか。
章子さん、世の中、時々はどうしようもないことだってある。
そやから、自分で全て背負ってたらきりがないで。
隆司もいる。おれもいる。
一人で抱え込まんでいいんやで。
「章子さん、そんなん、章子さんのせいやないやろ。
章子さん、頭ええから考えすぎなんやって。
たまにはおれみたいにぼーっとしてたらええねん。」
な、せっかく休みなんやし、りゅうのことかまったって。
最近あいつが来んから気楽でええねん、と、つとめて明るく言った。
すると、
「あの子、最近彼女でもできたんかなあ。」と、章子さんもやや明るい顔になった。
「直人くん、何か聞いてる?」と言う。
「この前、女の子が近くまで来てくれたみたいで、急いで出て行ったと思ったらにこにこして帰ってきて。
世の中そういう変わった子もいてるんかなあ。」と言うので、
「確かに、変わった子やで。ちょっときついけど、きれいな子やし、あいつにはもったいない。」と答えた。
それからしばらく、留美ちゃんと隆司のやり取りなんかを教えてやると、
章子さんはそれを楽しそうに聞いていた。
それから、
「確かに、隆司にはもったいない子やな。」と言うので、ほんとうに久しぶりに二人で声を上げて笑うことができた。