初恋
結局わたしは隣の部屋で寝かせてもらい、二人は毛布をかぶってカーペットの上で眠った。

初めて入ったその部屋は、布製の衣装ケースとハンガーにつられたいくつかの上着、
それからパイプベッドと布団が一組、それでいっぱいになる4畳ほどの部屋だった。

一組の布団はりゅうさんのものらしい。

ほんま、信じられへんやろ。
こいつと付き合っとるみたいやろ、と言ってから、あ、ちがうけどな、と大急ぎでつけ足した。

そして、まあでも、一人で飯食うのがお互いきらいみたいでなあ、と、独り言みたいにつぶやいた。

おやすみ、直ちゃん。
おやすみ、みーちゃん。

そう言いあうと、子どもの頃に戻ったような気がして、
わたしはそんな夜なのに、とても安心した気持ちで眠った。

起きると、冬の太陽はもうとっくに昇っていて、
直ちゃんは仕事に出かけたあとだった。

少し遅れたみたいだけど、アルコールのにおいのする息を消すために必死で歯磨きして出かけたそうだ。

りゅうさんが、お前、学校どうする?と聞く。

一限目には間に合いそうになかったので、昼から行くわ、というと、
いや、起こそうかと思ったけど、なおがぜったいに入るなって言うからな、と頭をかいた。

おなかがすいた、というと、信じられないという顔をしたが、
昨日の残りのカレーとごはんでカレーチャーハンを作ってくれて、
おまけに卵まで焼いてくれて、
即席のカレーオムライスを食べることができた。

これで鍋もきれいになるわ、と言ってくれたので、
少しは役に立ったみたいだ。

「これ、おいしい。」と言って、

留美ちゃんがこんな人がだんなさんだったらいい、という気持ちが少しわかった気がした。
< 156 / 170 >

この作品をシェア

pagetop