初恋
中学生の間に、もう一度神戸に行って、
そのあとはしばらく年賀状だけの付き合いが続いた。

高校生になった兄に、生意気にも彼女ができると、
直ちゃんも誰かとつきあったりするのかな、なんて考えて
しばらく眠れなかった。

だけどまあ、それも数日で、
健康なわたしは夕食を食べて、勉強机に座るととたんに睡魔が襲ってくる。

平和な毎日が続いた。

高校生になって携帯電話を買ってもらうと、
思い切って直ちゃんに電話をしてみた。

母の手製のアドレス帳をめくっていると、
父が複雑な顔で母に何か言っている。

「あほやで。直ちゃんだってもうかわいい彼女おるやろ。」と
母が聞こえよがしに言うので、わたしは初めて親に殺意を覚えた。

直ちゃんが携帯を持っているかどうか知らなかったから、
(多分持っているだろうと思っていたけど)
家のほうに直接かけてみる。

幸いなことに直ちゃんが出て、彼の携帯の番号とアドレスを教えてもらった。

それから、わたしはあんまりしつこくならないように気をつけながら、
日々の生活を直ちゃんにメールで連絡し始めた。

直ちゃんは迷惑と思っているのか、そうでないのかわからなかったけど、
遅くなってもぜったいに返事をくれたので、
くだらないメールのやり取りが続いた。

進路を相談したときも、「みーちゃんの好きなところへ行けばいいと思うで」と返してくれた。

好きなところへ行こう。

「神戸の学校に行く」と両親に言うと、
母が、
「ほんまにあほやな。」とあきれたようにつぶやいた。
< 30 / 170 >

この作品をシェア

pagetop