初恋
2年の終わりから、なんとなく付き合うか、って感じになった。
同じクラスで、しゃべりやすい子やとお互いに思ってたみたい。

こっそり一緒に帰ったり、長電話してみたり、
いろいろ楽しかったけど、
だんだんいやなところが見えるようになった。

留美ちゃんが遠くの学校に行こうとするのをいやがり、
やりたいことがあるといっても、それが何か理解しようとしなかった。

なんていうかな、
好きやと思って近づいたのに、
近づいてみたら思ってたような人と違って、
それが許せんようになった。

まあ、それで自然消滅や。
携帯変えたったし、もう会うこともないと思う。

付き合ったっていえるほど何もしてないけどな。

好きと思ってたのもほんまかどうか最近わからんねん。

手をつないだり、キスしたときはどきどきしたのにな。

それが留美ちゃんと井上の恋愛の顛末だった。

「ところで、」

と、発泡酒を半分くらい開けたところで留美ちゃんが勢いよく言った。

「そのりゅうさんってかっこいい?」

「は?ぜんぜんやで。おっさんやもん。」

「でも、美代子のタイプと違うってことは案外いいかもしれん。」

写真ないの?と聞かれたけど、
りゅうさんの写真を撮るなんて思いもつかなかったから、ない、と答えた。

「送ってもらってー。」

留美ちゃん、酔ってる。
でも、わたしだってなんとなく気分がいい。

そして、わたしは、アドレスを教えたとき以来初めて、りゅうさんにメールを送ってみることにした。

「写真送って」と送信すると、ややあって、「なお今風呂入ってるけど、それでええ?」と返信が来た。

「ほら、あほやろ。」と留美ちゃんに画面を見せると、「ほんまやあ」とげらげら笑う。

「りゅうさんの写真。」とさらに送信。

「呪いでもかけるつもりか?」「おれの写真は高いで」「事務所通して」とばかみたいなメールが続き、とうとう直ちゃんが電話をかけてきた。

理由を説明すると、直ちゃんも愉快そうに笑って、
30分後、ふくれっつらしたりゅうさんの写真が直ちゃんの携帯から送られてきた。

缶を開けてしまった留美ちゃんは、しばらくそれをじっと見て、
「あほやなかったらなあ!」と残念そうにつぶやいた。
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