初恋
それからの一週間は天国みたいだった。

寝て起きればごはんが出てくるし、
洗濯物は勝手にきれいになっているし、
冷蔵庫にはいつだって何か食べ物がつまってる。

親のありがたみがわかるなんて、わたしもだいぶ大人になったな。
結局は自分をほめるわたしである。

こっちの友達とファミレスで落ち合って、
ポテトとドリンクバーで半日おしゃべりする。

ちょっとしか離れていないのに、話すことはお互いに山ほどある。

高校時代の友達は、みんな直ちゃんのことを知っているので、
「で、どう?」と聞かれたけど、
どうとも答えようがないのがさみしいところだった。

好き放題に羽を伸ばして、明日は神戸に帰るという日だ。

わたしの好きなものを作ってくれるというので、
迷わずてんぷらをリクエストした。

まったく手伝おうともせず、
そのくせ、えび、えびたくさん揚げてな、などと生意気なわたしに、
母は、先が思いやられるという風にため息をついた。

夕飯にビールとたくさんのてんぷらを並べて、
祖父、祖母もそろって家族みんなで食卓を囲む。

「わたしもビール。」と言ってみたけど、
兄は、「お前に飲ませる分はない」と相手にしてくれない。

和やかな夕飯だった。

今頃、直ちゃんはりゅうさんと夕飯を食べているのだろうか。
ゴールデンウィークくらい、直ちゃんはおばさんのところへ帰らないのだろうか。

直ちゃんは、一人暮らしの理由を店が近いからというが、
自宅からだって通えない距離じゃない。
直ちゃんの家族の話を、ここ最近まったく聞いていないことにいまさらながら
気がついた。
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