初恋
冬休みの前に三者面談があって、今度は母親が吉崎にくってかかった。

「そんな、専門学校だなんて、直人が希望してることと違います。
先生も言うことが違うじゃないですか。」

「三浦くんの話をよく聞いてあげてください。
別におかしいことじゃないと思いますよ。」

そこで、直ちゃんは初めて、母親に自分の考えを主張した。

「おれがそうしようと思って、相談しててん。」

すると母は、、「こんな学校に通わせるんじゃなかった。」
と、吐き捨てるようにいった。

はあ、やっかいやな。
吉崎もがんこやけど、こいつもたいがいやな。
方向性はかなり違うけどな。

その方向性の違いが、先生に惹かれる理由なんだと思う。
母がもう少し、自分だけが正しいと思っている何かを崩してくれたら。

そうしたら、もしかしたら父も、あんなに追い詰められなくてよかったかもしれない。
父はめったに家に帰らなくなっていて、
それが母からの逃げであることを、直ちゃんは悟っていた。

あくる日、吉崎に味方をしてくれたことの礼を言い、
それから、精一杯、普通に聞こえるように、「おれ、先生のクラスになってよかったと思ってる。」と言った。
吉崎は、それはうれしそうな顔をして笑った。

その顔が、すごくきれいに見えて、

あ、おれ、あかんな、と、

自分の中で始まった間違いが、急速に膨れ上がっていくのを感じていた。
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