センブンノサン[完]
21時30分に2人同時にあがって、肌寒い店の外に出た。
駅より少し離れた商店街と住宅街の境目にあるので、このあたりはあまりひと気が無い。
2月の風はかなり冷たくて、身体の先端の全てが痛いくらい寒い。
紺のダッフルコートを着た千堂君はなんだか少し幼く見えて可愛い。
人が全くいない細い道を選んで、駅までの10分の道のりを歩く。
こんなにちゃんと隣を歩いたことは初めてに近かったので、改めて千堂君の背の高さを実感している。
「そういえば、火傷、大丈夫だったんか」
「あ、うん、お陰様で。しばらくヒリヒリしてたけど、痕にはならなさそう」
「そっか」
私の言葉に、彼はわずかに目を細める。でも暗くてよく見えない。
「ねえ、千堂君はなんでいつも適当なことばっか言ってるの?」
「何そのどストレートの剛速球並みの質問」
マフラーに顔をうずめながら、千堂君がこっちを向いた。
「なんか本心をあまり知られたくない人なのかなって、思って」
「そう思ってるなら核心つくような質問するんじゃないよ」
「あー、確かにね」
彼のもっともな意見に、私はバカみたいに素直に頷くと、彼は視線を爪先に戻して、ぽつりと呟いた。
「いいでしょ別に、本心は人に見せなくても」
「そうやって隠すから知りたがる人が増えるんだよ」
「ハハ、なるほどね」
千堂君は笑うとなんだか幼くなる。私はそれが嫌いじゃない。
「玉野も知りたい?」
試すような口ぶりに、いつもみたく冷たくスルーするか、ふざけて乗っかるか迷った。迷ってしまったのは多分、ほんの数パーセント図星だったからだ。