センブンノサン[完]

もう関わらない


あれから2週間が経ち、同時に千堂君が私を無視し続けて2週間が経った。

あと3日で終業式だ。このクラスとも、この席とも、バイトともお別れ (バイトは春休みに入ったらやめると親と約束していた)。

そんなどこか寂しいような時節なのに、隣の彼はあれ以来私と一切目を合わさない。私も話しかけない。

本当の彼の一部を知ってしまった罰なのだろうか?

核心に近づいた途端ゼロより前の地点に戻されるなんて、そんな残酷なことあるんですね。

なんだか傷つくというより、苛々してきた。

今は丁度3限目の授業で、わざと消しゴムを千堂君の方に落としてみたが、彼は完全にシカトだった。もう二度とこいつの消しゴムは拾ってやらない、そう誓った。

そんな風にずっと苛々した状態で授業を受けていたら、あっという間に一日が終わってしまった。


* * *

悩んでいる時に本が読みたくなるのは何故だろう。そこに答えが書いてあるわけではないのに。

自分のこの行動に意味があるのか分からないまま、私は図書館に来てしまった。

驚くくらい人はいなくて、というか私しかいなくて、司書の方も裏で本の整理をしていてカウンターに座っていなかった。

私はカウンターからかなり遠くにある、一番奥の文庫のコーナーに歩み寄り、同じ高さの背表紙をじっと眺めた。

同じ高さできっちり整列しているのに、中身は全く違うなんて不思議だ。こんなにピッタリと密着しているのに中身は全く違う世界があるなんて不思議だ。

秘めたるエピソードがそれぞれにあって、完全に同じものなんてこの世に一つとない。人の人生も同じだ。

誰しも他人には知られたくない話がある筈なのに、私は勝手に彼の話を読んでしまった。

彼が戸惑うのも無理は無い。

私は、カーペットの上に体育座りをして、適当な本を手にとって読んだ。

すると、ふと影が濃くなるのを感じて、私は上を見上げた。
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