センブンノサン[完]
気づけなくてごめん
三年生になると、宣告されていたとおり成績別に大きくクラス編成が変わった。
授業も受験科目に沿った選択制になり、クラスで動くという意識も薄まった。
私の配属されたクラスは、まあ上から二番目くらいのクラスで、そこそこかな、というところ。
もちろんアイツとは違うクラス (憎きことに彼は一番上のクラスだ)で、私は穏やかな日常を取り戻している。
「ねえー! 店長に泣き疲れてバイトやめられないんだけどー!」
同じクラスになったバイト仲間だったユナは、一限早々泣きついてきた。
今日はクラス分けされた数学の授業の初回日で、まだあまり話したことのない生徒がたくさんいる。
「だからあれほど早めに言っておけって忠告したのに……」
「光基くんも辞めちゃうしさー! ユナつまんない!」
あ、そうなんだ……バイトもう辞めたんだ。
終業式が終わって以来全く彼の名前すら聞いていなかったから、やっと近況を知り少し驚いた。あの人もやっぱり受験するんだな。成績いいし世渡り上手だから推薦で行っちゃうのかと思ってた。
そんなことを思っていたら、ガラッと教室のドアが開き、髭面のおじさんが入ってきて雑に紙を張り出した。
「はい、座席指定だからこの順に座りなおせよー」
「えー、だる」
わりと大きめの声でユナが愚痴をこぼしたので少し焦ったが、私達は素直に席を移動して座り直した。
隣の席の人はまだ来ていないようだ。
初回に来ないと大きく減点されるのに、大丈夫かなこの人。
そんな風に心配していると、開始一分前に扉が開いた。
「おー、もっと余裕もってこい、千堂」
「すみません、ちょっと体調悪くて……」
「大丈夫かー」
〝センドウ〟という響きに、胸がどくんと強く脈打った。