センブンノサン[完]
「玉野じゃん……会いたかった……やっと、会えた……」
「は……え、えっ」
そう言うや否や、千堂君は私を抱きしめた。いや、抱きしめるというより覆いかぶさってきた。
もちろん教室はどよめいて、先生も目を丸くしていた。
私は一気に羞恥心に襲われ、千堂君の背中をバシッと叩いた。
「ちょっと! 何寝ぼけてんの!? 殴るよ!?」
「お前さー、あんなこと言って俺から離れるとか、ズリぃよ……」
「は? ちょっと本当に……」
「つーか吉川とやってねーし、キスだけってうるせぇからキスしただけだし」
「ちょっ、しー!!」
このクラスに吉川さんもいるのに……ふと斜め前を見ると彼女は顔を赤くして震えていた。
教室はざわつきだすと、驚いて固まっていた先生はやっと正気に戻ったようで、静かに、と強めに注意した。
「玉野、もうめんどいからそいつ保健室送りにしてあげなさい」
そんな、刑務所送りみたいに言わなくとも……。
私はこの場をおさめるためにはとりあえずこの人を連れ出さないといけないことは分かったので、渋々立ち上がり彼の腕を引いた。
「ほら、ちゃんとして!」
「う、おえ、気持ち悪……」
「 ちょっと! 肩ゲロしたら許さないからね!」
「外、一旦外の空気吸わして……」
なんなの、こいつ、本当に!
私は騒然とした教室から千堂君を引きずり歩かせ外へ向かった。
千堂君の体はとてつもなく熱くて、もしかしたら39度ちかくあるんじゃないの? というほどだった。
彼の望み通り1度昇降口までつれてきてあげた。完全に外まで出ると座るところが無いので、私は彼を玄関と校内を隔てる段差に座らせた。
「よく今日学校来られたね……」
彼に肩を貸しながら呆れたように言うと、彼は激しく咳き込んだ。思わず背中をさすってしまった。