センブンノサン[完]
「ごめんな……」
千堂君が、もう完全に消えたタバコの火傷の痕があった箇所を切なそうに指でなぞる。
他人の痛みにこんなにも弱いあなたを、どうして私は突き離したりしたのだろう。
「ねぇ今、熱にうかされて適当なこと言ってるんじゃないよね……?」
そう問いかけると、彼は真剣な瞳で私の手をもっと強く握る。
「言ってないよ、さっきの教室のこと思い出して死にたくなってる」
「あの時はうかされてたのね」
「今は正気だよ、本当に」
「正気になった今、何か私に言うことないの?」
私は、熱のこもったマスクに指をかけずらした。
彼の言葉が、ちゃんとクリアに聞こえるように、聞き逃さないように。
「分かった、小娘、俺の人生初の告白よく聞けよ」
「了解です」
「……隣の席になった時から好きです」
「ぶっ」
彼の思いがけない告白に、私は盛大に噴き出した。
千堂君は顔を赤くして、笑うな、と私の頭を軽く叩いた。
「何それ初耳もいいとこだよ!」
「お前俺のあんなに分かりやすいアプローチを以ってしてその発言してんの?」
「どっ、どこが分かりやすいアプローチ……!?」
何が恐ろしいって、普通好きな人に『同情心が加速して、俺のことが好きになったとか、そんなつまらないことになってんのか』なんて言えるか? 言えないよ、普通は。
そんなこと言われて、分かるわけないじゃんか。
なんだか安心して、びっくりして、嬉しくて、涙が出てきた。
もう、本当に、なんなのこの人。