ギャルがゲーマーやってちゃダメですか?
「...!?」
げっ。いきなりとかまじかよ。
念じていた私の想いは届かなかった。
私は嫌々ソファーから立ち上がり、身だしなみを整えてから客の元へと向かった。
すず。
私の源氏名。
本名は水野 凉花(みずの すずか)、18歳。
御察しの通り、キャバ嬢です。
高校卒業間際になっても将来に意味を見出だせなかった私は、自由で自分のペースを保ちつつも稼ぐことのできるキャバクラに元々憧れを抱いていたこともあって、卒業と同時に嬢になった。...が、実際やってみると自分に合う仕事ではなかった。
辞めたいと切に願ってもスカウトしてくれた方に申し訳ないという情に負けてしまい、辞められずにいた。
私は面倒なことが大嫌い。
趣味が合う友達以外との他愛ない会話も苦痛。
下心丸出してベタベタくっつかれるのも気持ち悪い。
客に媚び売って営業メールや電話、同伴、アフター...有り得ない。指名なんていらない。その場にいるだけでも大卒の初任給程度はもらえるんだから。
バックのシステムを完全に無視し、基本給だけを目当てに出勤していた。
※「バック」・・・ドリンクや指名、同伴などで客が金を払えば払うだけ嬢の給料が上がっていくシステム。つまり歩合。