ハツコイ奪取



「あれ、浦谷じゃねーの」


俺の背後から匠海が呼ばれる。

匠海はそちらを振り返って、その男に頭をほんの少しだけ下げた。



「キャプテン」


サッカー部のキャプテンらしい。



「何何、一夏ちゃんの話? 俺も聞きたいんだよね〜」


「違いますって」


「中学の時めっちゃ有名だったじゃん、お前と一夏ちゃん。
 付き合ってたんじゃなかったっけ?」


新の目が見開かれ、俺は匠海とキャプテンの会話を聞いているだけ。



「付き合ってないっすよ。 単なる幼馴染ってだけで」


「そーなん、んならさ、ちょっと紹介してくんない?
 一夏ちゃん中学の時と違って、日に日に可愛くなってくじゃん? 超タイプなんだよね」


「俺と一夏、もう仲良くないんで。すんません」


困ったように眉を下げる匠海は、相手がキャプテンだからだろうか、面倒くさそうにはしない。

絶対に後で『あの人面倒くせ』って愚痴るけど。

そんな話を尻目に、俺は新に問いかける。



「一夏ちゃんて誰よ?」


「えー。知らないのかよ。
 俺のクラスのアイドルだよ」


説明が意味不明すぎて、余計に分からんわ。





< 10 / 11 >

この作品をシェア

pagetop