ハツコイ奪取
「あれ、浦谷じゃねーの」
俺の背後から匠海が呼ばれる。
匠海はそちらを振り返って、その男に頭をほんの少しだけ下げた。
「キャプテン」
サッカー部のキャプテンらしい。
「何何、一夏ちゃんの話? 俺も聞きたいんだよね〜」
「違いますって」
「中学の時めっちゃ有名だったじゃん、お前と一夏ちゃん。
付き合ってたんじゃなかったっけ?」
新の目が見開かれ、俺は匠海とキャプテンの会話を聞いているだけ。
「付き合ってないっすよ。 単なる幼馴染ってだけで」
「そーなん、んならさ、ちょっと紹介してくんない?
一夏ちゃん中学の時と違って、日に日に可愛くなってくじゃん? 超タイプなんだよね」
「俺と一夏、もう仲良くないんで。すんません」
困ったように眉を下げる匠海は、相手がキャプテンだからだろうか、面倒くさそうにはしない。
絶対に後で『あの人面倒くせ』って愚痴るけど。
そんな話を尻目に、俺は新に問いかける。
「一夏ちゃんて誰よ?」
「えー。知らないのかよ。
俺のクラスのアイドルだよ」
説明が意味不明すぎて、余計に分からんわ。