ハツコイ奪取
「今一夏ちゃんと話してるのー」
そこで久しぶりに合う私と匠海の目。
それはもう冷たく変わってしまっていた。
「迷惑かもしれないだろ。結人に返すもんあるんじゃなかったのかよ」
「あ、そうだった。ごめんね、一夏ちゃん。
また話そうね」
白石くんはにっこりと笑ってそう言い、教室から出ていった。
匠海はスポーツ推薦でこの学校に入学した。
もちろんサッカーで。
この学校はサッカーやバスケ、野球なんかで有名らしく、また進学校としても有名だ。
匠海がここの学校に入学していたなんて、入学してから1週間は知らなかった。
もう匠海について知ってることは少ない。
「早く働いて、…ここから出たい」
そう一言、小さな声で呟いた。
家からも、この街からも。