ハツコイ奪取



「今一夏ちゃんと話してるのー」


そこで久しぶりに合う私と匠海の目。

それはもう冷たく変わってしまっていた。



「迷惑かもしれないだろ。結人に返すもんあるんじゃなかったのかよ」


「あ、そうだった。ごめんね、一夏ちゃん。
 また話そうね」


白石くんはにっこりと笑ってそう言い、教室から出ていった。


匠海はスポーツ推薦でこの学校に入学した。

もちろんサッカーで。


この学校はサッカーやバスケ、野球なんかで有名らしく、また進学校としても有名だ。

匠海がここの学校に入学していたなんて、入学してから1週間は知らなかった。


もう匠海について知ってることは少ない。



「早く働いて、…ここから出たい」


そう一言、小さな声で呟いた。


家からも、この街からも。




< 8 / 11 >

この作品をシェア

pagetop