ハツコイ奪取
* ? side*
「ちょーっとくらい待ってくれてもいいのにさ! 何でいっつもだらーんとしてるのに急かすんだよ」
「別に急かしてねぇだろ!」
「急かしてたじゃん! 俺がせっかく一夏ちゃんと楽しくしゃべってたのにさ!
一夏ちゃんだよ? あの可愛い一夏ちゃんがしゃべってくれるなんて、ほとんどないんだよ?」
「……ハァ…面倒くせ」
登校して廊下を歩いていると、聞こえてきたその声。
……朝なのにうるさいな…。
「うるさいよ、お前ら」
そう言ってその二人の肩を叩いた。
「結人(ゆいと)、はよー」「おはよー!」
「よぉ、何してんの?」
「これ、借りてたやつ返しに来た。
結人教室にいなかったから、ジュース買ってたんだー」
そう言って白石新は俺にエロ本を生で渡してくる。
気遣いのできない奴…。まぁいいけど。
「で? ナンパの話?」
「ちげーし。もういいだろ、この話は」
何故かこの話を面倒くさそうにやめようとする浦谷匠海。
俺と馬が合う匠海と新はクラスが違っても、よくこっちに来てくれる。
「何、内緒話?」
「一夏ちゃんの話〜」
新が満面の笑みで女の名前を出してくる。
……いや、誰だよ、いちかって…。
知らねぇから聞いてんのに。