あなたの一番大切な人(1)
【序章】夜も更けて
 静寂に包まれた城内には、クリスマスパーティ後の賑やかな雰囲気は全く感じられない。

窓を開けても風すら吹かない漆黒の闇が広がる中、床にはたくさんのオーナメントと大きなモミの木が無残に倒されている。

数日前にオーナメントを飾る彼女と彼の顔を思い出し、遠方に旅立っている城主のことを思いはせた。

 若き国王。澄んだ青い瞳は一体どういう過去を見、どういう未来を創造しているのだろうか。

 赤いローブを身にまとった男性は、大股で部屋の中を縦横無尽に歩き、棚に置かれた木製の時計に目をやった。

文字盤がはっきりとして、部屋の遠くからも時刻を確認することができる。

数時間前まで、賑やかなパーティが行われていたが、その時を止めたのは他でもない自分である。人もトリも虫も風も。

今まで行われていたことは誰一人知らない。自分と彼女以外は...

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